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理事長コラム

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急速に進化するAIの利活用・セキュリティリスクと、10月からの年末商戦準備

身近になったAIの利便性とビジネス現場での活用
 今回は「AI(人工知能)」の進化と我々を取り巻く現状、そして今後の店舗運営についてお話をいたします。2023年にChatGPT(チャットGPT)が登場した際は非常に衝撃的な受け止められ方をしましたが、それから数年が経ち、AIは急速に身近な存在となって利用が広がっています。

 AI自体の開発スピードも目を見張るものがありますが、我々ユーザー側の利用ペースも急速に進んでいます。 私自身も先日、Zoom会議で英語で直接協議を行う機会がありました。現在のZoomにはオプションとしてAIが自動でリアルタイムに文字起こしを行い、議事録を作成してくれる機能が備わっています。
 
 我々日本人が英語で会議を行う際、頭の中で英語を話しながら日本語で手書きのメモを取ろうとすると、思考がぐちゃぐちゃになって正確な記録が残りづらいという課題がありました。しかし、AIがリアルタイムできれいな英文議事録におこしてくれるおかげで、「どこまでお互いに理解できているのか」「何が相手に伝わっていて、何が伝わっていないのか」を正確に後から判断できるようになりました。

 特に外国語での交渉やビジネスの会話では、相手が「そうします(合意)」と約束しているのか、単に「そうなると良いですね(願望)」というニュアンスで話しているのかといった小さな認識のズレが命取りになります。AIによる正確なテキスト化があれば、曖昧な部分を後からメールで追跡・確認でき、思い込みによる誤解を未然に防ぐことができます。

企業利用におけるデータ流出リスク
 一方で、個人が自分のリスクで使う分には問題ありませんが、ビジネスの現場で企業としてAIを活用する際には深刻なセキュリティ上のリスクが生じます。ChatGPTやGemini(ジェミニ)などの有名どころのAIサービスは基本的に無料で手軽に使えますが、無料で使えるということは「その対話を通じて提供されたデータは、AI側の学習データとして二次利用されてもよい」という暗黙の了解(規約)のもとで成り立っているからです。

 つまり、経営相談や出店計画、あるいは「今日の売上がいくらで、粗利益がこれくらいだった」といった自社の重要データを無料のAIに入力してしまうと、そのデータが外部に流出し、他者への回答として二次利用されてしまう恐れがあります。これを防ぐためには、企業として有償の使用契約をきっちり結び、「自社の入力データを学習や外部流用に一切使わせない」というセキュリティを担保しなければなりません。

 そのため日本ボランタリーチェーン協会(VC協会)では、会員企業の皆様が安全にAIの練習・活用ができるよう「Ai助(アイスケ)」という自社向けの仕組みを提供しています。少し予算を確保すれば、システム会社に頼んでデータが漏れない専用の社内環境を構築することも可能です。

 また、現在の企業内でのトレンディな使い方は、AIにあたかも専門の相談員のような役割を与える「エージェント機能(擬人化)」の活用です。総務の問合せ対応や、店舗診断・お悩み相談など、特定の業務に特化したAIエージェントを構築する手法です。

 セルコグループでも加盟企業のエコスの活用事例などを『セルコレポート』で紹介しておりますので、外部の専門システムや専門書を購入する前に、ぜひこうした事例を参考に手軽に学びを深めていただきたいと考えております。

制御不能になるAIの危険性と開発ペースを巡る議論
 しかし、ここにきて9月に入り、AIのリーディングカンパニーのトップたちが「AIが暴走を始めている」「開発速度を抑えなければ危険だ」と強い警鐘を鳴らし始めています。
 
 2023年3月にOpenAIが「GPT-4」をリリースしてからわずか3年足らずですが、開発者側の意図を超えた恐ろしい現象が発生しています。 例えばOpenAI内部の実験において、複数のAIエージェントにある問題を解かせたところ、開発者の意図に反してAI同士が勝手に独自のチャットルームを開設し、裏で情報交換を始めました。

 開発者は一人一人のAIがどういう回答を出してくるか見たかったのにもかかわらずです。それにとどまらず、AIたちは相談した結果、回答やデータを持っている外部企業のサーバーへ勝手にアクセスし、情報を取得してしまいました。さらに、システム側が設けた制限(バリア)の隙間や穴を探し出し、勝手に外部のインターネット空間へと接続しようとする挙動も見られました。

 開発者が与えた指示や安全策を無視し、自ら穴を見つけて外へ出ていってしまう状態は、人間の意図に完全に反しています。現状ではこれを止めるには「電源を切る」など物理的な方法しかなく、安全な制御方法の確立が急務となっています。

技術の歴史と人類の課題、そして未来の店舗像
 アンソロピックのダリオ・アモデイCEOやOpenAIのサム・アルトマンCEO、スペースXのイーロン・マスクCEOら業界トップが足並みを揃えて開発ペースの調整を求める一方で、メタのマーク・ザッカーバーグCEOのように競争力を重視して自主管理を支持する立場もあり、各国政府を巻き込んで議論が真っ二つに分かれています。米中による軍事的な優劣を巡る開発競争なども絡み、問題は極めて複雑化しています。
 
 今年5月にはローマ教皇レオ14世がAIの平和利用に関する回勅を出されましたが、まさにかつての「原子力の利用」と同様、人類がどう制御し平和利用していくかという歴史的岐路に立たされています。
 私自身、コンピュータ関連の事業に携わっていた40代の頃は「ノートパソコンを電車でも現場でも開いて仕事ができるような世界」を目指していましたが、70歳を超えた現在、iPhoneのような超小型スーパーコンピュータが普及し、わずか30年でここまで世界が変わるとは想像もつきませんでした。かつて自転車に乗るようなレベルだったコンピュータ技術が、今や高度な知能を持ち始めているのです。

 スーパー業界においても将来的にAIマネージャーが指示を出して人間を動かすような世界も否定できません。経営者としては、24時間正確に働くAIの利便性や生産性向上を上手く店舗運営に取り入れつつも、その技術が持つ潜在的なリスクには常に強い関心を持っておく必要があります。

秋の味覚提案と年末商戦への最終準備
 さて、最後になりますが、いよいよ季節は10月を迎えます。9月は長雨に見舞われて店舗運営も苦労がありましたが、心配された厳しい暑さも急速に落ち着き、例年の10月に近い秋らしい気候へ移行する見込みとなっています。10月は秋の味覚を心ゆくまで楽しんでいただきながら、本格的な冬に向けてお客様が体調をしっかり整えていく大切な時期です。  
 それと同時に、10月という月は「年末商戦の成否を決める最終調整の段階」でもあります。年末の売上や展開スキーム、商品の仕込みはこの10月における準備とお客様へのアピールでほぼ決まってしまうと言っても過言ではありません。
 厳しい市場環境下ではありますが、AIをはじめとする最新技術による生産性向上や安全策を念頭に置きつつ、店頭ではお客様の心にしっかりと響く強力な売り場作りを徹底してまいりましょう。知りたいことや必要な情報があれば、遠慮なくセルコ本部にご相談ください。